「このまま今の会社にいて、本当に大丈夫か…?」
30歳を過ぎた頃から、まるで呪文のように、この言葉が頭の中をぐるぐる回り始めたんだ。
給料は上がらないのに、責任だけは重くなる毎日。
かといって、市場価値の高いスキルがあるわけでもない。
「とにかく、安定が欲しい…!」
すがるような思いで転職サイトを眺めていて、ふと目に留まったのが「浄水場の施設管理員(民間委託)」という仕事だった。
「インフラ系か…確かに安定はしてそうだな」
でも、ネットで調べると出てくるのは「楽すぎワロタw」みたいな極端な意見と、「夜勤がきつい、汚い」みたいなネガティブな口コミばかり。
…どっちなんだよ!( ゚д゚ )
こんな情報じゃ判断できるか!と諦めかけたその時、ふと思い出した。
「そういえば、昔の知り合いに市の水道課に就職したヤツがいたな…」
藁にもすがる思いで数年ぶりに連絡を取った僕に、彼は”中の人”だからこそ知る、浄水場のリアルな実態を教えてくれたんだ。
この記事は、僕が彼から聞いた話を基に、本気で転職を検討し、そして最終的に『やめた』決断に至るまでの、全記録。
もしあなたが僕と同じように「安定」を求めてこの仕事に興味を持っているなら、きっと、どこよりもリアルな判断材料になるはずだ。
ネットの噂は本当?「浄水場の仕事=きつい」の真相に、中の人が答える
早速だけど、単刀直入に聞いてみたんだ。
ネットで見る「きつい」って噂は本当なのか、ってね。
そしたら彼は、苦笑いしながらこう言った。
「あー、まあ、嘘じゃないけど、ちょっと違うんだよなぁ」
知人が語った「きつい」の正体
彼が言うには、ネットの「きつい」は、主に3つのポイントに集約されるらしい。
- ① 精神的なプレッシャー
- 「蛇口をひねれば安全な水が出る」という当たり前を絶対に止められないプレッシャー。これが一番きついかもな。小さなミスが大きな断水事故に繋がるから、常に緊張感はあるよ。ルーティンワークに見えて、全く気は抜けない。
- ② 覚えることの多さ(最初の1年)
- 未経験ウェルカムだけど、最初の1年はマジで勉強漬け。施設の膨大な配管や機械の配置、緊急時の対応マニュアルとか、全部頭に叩き込む必要がある。ここで脱落する人も、まあ、いる。
- ③ どうしても避けられない物理的な作業
- 夏の草刈りとか、冬場の雪かきとか、そういう雑務もある。薬品の独特な匂いが苦手な人は苦手だろうし、汚泥処理の現場とかは、まあ、キレイとは言えないわな(笑)
「でもさ」と、彼は続けた。
「それって、どんな仕事にもある『大変なこと』の範囲内だと思わない?むしろ、世間でイメージされてるより、ずっとクリーンで、残業も少ないんだけどな」
【裏ワザ】元・市職員の知人が語ってくれた、求人票じゃ分からないメリットとデメリット
ここからが本題。
彼が教えてくれたのは、求人票には絶対に書かれない「中の人」ならではのメリットと、そして「人を選ぶ」理由だった。
メリット:「神レベルの安定」と「人間らしい生活」
- 景気にマジで左右されない
- 「コロナだろうが不景気だろうが、人が水を飲まなくなることはないからな。会社の業績が…とか、そういう次元の話じゃない。究極のディフェンシブ株みたいなもんだよ」
- プライベートの時間が確保しすぎなくらい確保できる
- 「交代制勤務だから、残業はほぼゼロ。トラブルがなければ定時でピタッと帰れる。夜勤明けと公休を組み合わせれば、平日から3連休とかも作れるから、役所も病院も余裕。趣味に生きたいヤツには天国だと思う」
- 人間関係が超ドライで楽
- 「良くも悪くも、最低限の報連相ができればOKな世界。飲み会とか社内イベントもほとんどない。職場の人間関係に疲れたヤツが、流れ着くには最高の場所かもな(笑)」
デメリット:そして僕が「やめた」理由に繋がること
ここまでは、僕が求めていた「安定」そのものだった。
正直、「これ、天職じゃん!」ってテンションが上がっていた。
…でも、彼の話は、僕にとって致命的とも言えるデメリットに及んだんだ。
- 給料の上がり方が超ゆるやか
- 「安定はしてるけど、爆発的に稼ぐことは絶対にない。年功序列で少しずつ上がっていく感じ。資格手当とかはあるけど、同年代の営業職みたいに、成果を出してインセンティブでガッポり、みたいな夢は見れない」
- 身につくスキルが、あまりにもニッチすぎる
- 「浄水場の運転管理スキルって、その道のプロにはなれるけど、他の業界じゃ全く通用しない。一度この世界に入ったら、基本的には同業他社にしか転職できないと思った方がいい。『手に職』ではあるけど、かなり特殊な『職』だよ」
- 「改善」や「挑戦」を評価する文化がない
- 「一番大事なのは、『何もしないこと』『何も起こさせないこと』。だから、業務改善の提案とか、新しいことへの挑戦とかは、基本、歓迎されない。むしろ、波風立てるな、って思われる。決められたことを、決められた通りに、毎日正確に繰り返すことが最高の評価なんだ」
僕が浄-水場の仕事を『やめた』たった一つの理由
彼の話を聞きながら、僕は必死に自己分析をしていた。
「安定」は、喉から手が出るほど欲しい。
プライベートの時間も、今の倍は欲しかった。
でも…
「決められたことを、決められた通りに、毎日正確に繰り返すことが最高の評価」
この言葉が、どうしても喉の奥に引っかかったんだ。
今の仕事は、確かに不安定で、理不尽なことも多い。
でも、自分で工夫して、成果が出た時の達成感。
新しいスキルを身につけて、自分の成長を実感できる喜び。
それが、僕にとっての「仕事のやりがい」だったんだ、と気づかされた。
給料がゆるやかにしか上がらないことも、スキルが他に活かせないことも、僕にとっては「安定」と引き換えに失うには、あまりにも大きなものだった。
知人にも言われたよ。
「お前みたいなタイプは、たぶん3年で飽きるぞ(笑)」って。
その通りだと思った。
僕は、浄水場の仕事を『選ばなかった』。
それでも、こんな人には「天職」だと断言できる
僕の個人的な価値観で、この仕事を選ぶことはなかった。
でも、誤解しないでほしい。
これは、僕にとって「合わなかった」というだけで、浄水場の仕事がダメだなんて微塵も思っていない。
むしろ、今回の調査を通して、こんな人にとっては最高の職場だと確信した。
- とにかく安定した環境で、心穏やかに働きたい人
- 仕事は仕事と割り切り、プライベートの時間を何よりも大切にしたい人
- 目立つことは苦手だけど、決められたことをコツコツ正確にこなすのが得意な人
- 社会のインフラを支えているという「縁の下の力持ち」的な役割に誇りを持てる人
もし、あなたがこれらに当てはまるなら、「浄水場の仕事はきつい」なんていうネットの噂に惑わされず、一度、真剣に検討してみてほしい。
最後に:転職は「自分を知る」旅
僕の転職活動は、結局、元の会社に留まるという形で幕を閉じた。
でも、この調査を通して、自分が仕事に本当に求めているものが何なのか、痛いほどよく分かった。
それは、他の誰でもない、僕自身の価値観。
転職は、新しい仕事を探すだけの行為じゃない。
「自分とは何者か」を探す旅なんだと、今は思う。
この記事が、あなたの旅の、良き羅針盤になることを、心から願っている。
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