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# 【体験談】観光協会の求人がない…八方塞がりだった私が「隠し扉」を見つけた就活術

「地元が好きだ。この街の魅力を、もっと多くの人に伝えたい」

そんな想いを胸に、地元の観光協会で働くことを夢見ていた大学3年生の秋。周りの友人たちが次々とインターンの内定を手にし、スーツ姿もどこか板についてきた頃、私だけが巨大な壁の前で立ち尽くしていました。

公式サイトの採用ページは「現在、募集はありません」。

市役所の広報にも、大手就活サイトにも、その名前はどこにも見当たらない。

(どうして…?どうしてみんなみたいに、スタートラインにすら立てないんだろう…?)

カレンダーの日付が進むほど、胸に渦巻くのは焦りと孤独感。まるで自分だけが、地図のない森に迷い込んでしまったようでした。

この記事は、当時の私と同じように、見えないゴールに不安を感じているあなたへ向けて書いています。

一般的な「就活の常識」が通用しない場所で、いかにして道を切り拓き、夢への扉を開けるか。

これは、情報戦の片隅で途方に暮れていた、ひとりの学生の逆転の物語です。もしあなたが今、同じ痛みを感じているなら、どうかもう少しだけ、この話を読み進めてみてください。きっと、あなたのための「隠し扉」を見つけるヒントが、ここにあります。

私が陥った「求人情報がない」という名の迷宮

ネットの海を彷徨う日々

私の就職活動は、他の学生と何ら変わりなく始まりました。大学のキャリアセンターが主催する説明会に参加し、就活サイトに登録し、自己分析のために分厚い本を何冊も読みました。

「地元の魅力を発信する仕事がしたい」

その軸だけは、ブレませんでした。生まれ育ったこの街の、観光客が知らないような路地裏の名店、夕暮れ時だけに見せる川辺の美しい景色、温かい地元の人々との交流。そのすべてが、私の誇りでした。

だから、第一志望は「市の観光協会」。迷いはありませんでした。

しかし、その決意とは裏腹に、現実はあまりにも過酷でした。

  • 観光協会の公式サイト: 採用情報のページは常に空っぽ。更新される気配すらない。
  • 市の公式サイト: 職員採用はあるが、それは「行政職」という大きなくくり。観光協会への配属が確約されているわけではない。
  • 大手就活サイト: 「観光協会」で検索しても、ヒットするのは遠く離れた都市のものばかり。

毎日、毎日、同じサイトを巡回するだけの不毛な時間。友人たちが「昨日、〇〇の面接でさ…」と楽しそうに語り合う声が、ガラス越しのように遠く聞こえました。

「公務員試験しかないの?」見えない正解への焦り

(もしかして、観光協会で働くには、市役所に入って配属されるしかないんだろうか…?)

そう思い至り、本屋で分厚い公務員試験の参考書を手に取ってみました。法律、経済、行政…ページをめくるたびに、頭がクラクラしてくる。私がやりたいのは、この難解な問題を解くことじゃない。もっと直接的に、街の魅力を伝える仕事のはずなのに。

(私のやりたいことと、やるべきことが、どんどん離れていく…もうダメかもしれない…)

心の声が、弱音を吐き始めます。まるで、出口のないトンネルの中を、たった一人で歩いているような感覚。親の期待、友人との比較、そして刻一刻と迫るエントリーシートの締め切り。すべてが重圧となって、私の肩にのしかかっていました。

「諦めて、普通の民間企業を探そうか…」

そんな考えが頭をよぎった、ある日の午後。大学のキャリアセンターで、私は一枚のチラシに目を奪われました。

視界が開けた瞬間。「待ち」から「攻め」への意識改革

それは、卒業生との交流会を知らせる、何の変哲もないチラシでした。その隅に、小さく書かれていたのです。

「市役所・観光関連団体OB/OG参加予定」

藁にもすがる思いで参加したその交流会で、私は一人の卒業生、佐藤さん(仮名)と出会いました。彼は、私がまさに目指していた、あの観光協会で働いている方でした。

「求人、見つからなくて困ってるんだね。…うん、そうだよね。多分、君が探しているような『新卒採用』の入り口は、元々ないんだよ」

衝撃的な一言でした。しかし、彼の話は、私の凝り固まった頭を解きほぐす、魔法の言葉に満ちていました。

「観光協会の就活はね、行きつけの隠れ家的なお店の常連になるプロセスに似てるんだよ」

例え話:あなたは「お客さん」のままですか?

佐藤さんは、こう続けました。

「考えてみて。すごく気に入った、メニューが表に出ていない隠れ家的なお店があるとする。君はそのお店で働きたい。その時、どうする?」

  • 一般的な就活(待ちの姿勢): お店のシャッターが閉まっている前で、ただひたすら「アルバEイト募集」の貼り紙が出るのを待っている状態。いつ開くかも、募集があるかもわからないまま、時間だけが過ぎていく。
  • 提案する就活(攻めの姿勢): まずは、客としてそのお店に何度も通う(イベントやボランティアに参加する)。店主(職員)と顔見知りになり、お店のこだわりや歴史(活動内容や理念)を深く知る。そして、「このお店が本当に好きなんです!何か手伝えることはありませんか?」と情熱を伝える(直接アプローチする)。

「求人サイトを眺めているだけじゃ、いつまで経っても君は『お客さん』のままなんだ。でも、お店の中に入って、店主と信頼関係を築ければ、『じゃあ、ちょっと厨房に入ってみる?』って、関係者通用口のドアを開けてもらえるかもしれない。僕らの世界は、そういう『ご縁』で繋がることが多いんだよ」

目から鱗が落ちる、とはこのことでした。

私は「求人」という名の貼り紙を探していただけだった。そうじゃない。探すべきは、中に入るための「繋がり」や「ご縁」だったんだ。

なぜ観光協会の求人は「隠れている」のか?

佐藤さんの話を聞いて、私は観光協会の採用がなぜ特殊なのかを徹底的に調べました。そこには、一般的な企業とは全く異なる構造があったのです。

隠された求人の3つの理由

  • 1. 組織の形態と規模: 多くの観光協会は、営利を第一としない「一般社団法人」や「DMO(観光地域づくり法人)」です。行政からの補助金や会員企業の会費で運営されており、大手企業のように毎年決まった人数の新卒を採用する体力がない場合がほとんどです。
  • 2. 欠員補充が基本: 定期採用よりも、職員の退職などによる欠員が出た場合に、その都度補充するケースが主流です。そのため、募集は不定期かつ非公開(ハローワークや縁故など)で行われることが多くなります。
  • 3. 求められる「即戦力」と「熱意」: 小規模な組織だからこそ、一から十まで手厚く教える余裕がないことも。そのため、ある程度のスキル(語学、PCスキル、企画経験など)を持つ人材や、何よりも「この地域が好きで、貢献したい」という本物の熱意を持った人材を求めているのです。

この事実を知った時、私は不思議と安堵しました。求人が見つからなかったのは、私の探し方が悪かっただけではなく、そもそも「探し方」のルールが違ったのです。

「隠し扉」を開けるための具体的な5ステップ

光が見えた私は、すぐに行動計画を立てました。もう、迷っている時間はありません。

Step 1: 「お店」の情報を徹底的にリサーチする

まずは敵を知ることから。公式サイトを隅々まで読み込み、以下の情報をノートにまとめました。

  • 事業内容: どんなイベントを主催し、どんなパンフレットを作成しているか。
  • 組織図: どんな部署があり、何人の職員がいるのか。
  • 情報発信: SNS(Facebook, Instagram, X)をフォローし、日々の活動をチェックする。
  • 関連人物: 協会の会長や主要メンバーが、地元のどんな企業の役員なのかも調べる。

これは、ただの企業研究ではありません。相手への「愛」を示すための準備運動です。

Step 2: 「お客さん」として足繁く通う

次に、観光協会が関わるイベントや活動に、とにかく顔を出しました。

  • 地域の祭りでのボランティアスタッフ
  • 観光案内所でのアンケート調査協力
  • 協会が主催するフォトコンテストへの応募

目的は、職員の方に「あ、あの子、また来てくれてるな」と顔を覚えてもらうこと。最初は緊張しましたが、「いつもSNS見てます!この前のイベント、すごく面白かったです!」と声をかけると、意外なほど気さくに話をしてくれました。

Step 3: 「常連さん」になって顔と名前を覚えてもらう

イベント参加を繰り返すうち、数人の職員の方と自然に話せるようになりました。そこで、大学の名刺(キャリアセンターで作成)を渡し、就職活動中であること、観光協会で働くのが夢であることを、熱意を込めて伝えました。

「そうなんだ!頑張ってるね!」と応援してくれる職員の方もいて、孤独だった就活に、初めて味方ができたような気がして、涙が出そうになりました。

Step 4: 勇気を出して「厨房」をノックする

ある程度の関係性が築けたと感じたタイミングで、私は最後の一歩を踏み出しました。

観光協会の代表メールアドレス宛に、丁寧な自己紹介と、これまでのイベント参加の感想、そして「無給でも構わないので、インターンシップや何かお手伝いできることはないでしょうか」という内容のメールを送ったのです。

返信は、一週間後に来ました。

「一度、お話を聞かせてください」

それは、私が待ち望んでいた「関係者通用口」のドアが、少しだけ開いた瞬間でした。

Step 5: もう一つの道「公務員試験」も準備する

攻めの就活と並行して、リスクヘッジも忘れませんでした。市役所の「行政職」として採用され、観光関連部署に配属される、というルートです。こちらは正攻法ですが、観光協会への直接アプローチが叶わなかった場合の、重要なセカンドプランでした。

アプローチ方法メリットデメリットこんな人におすすめ
直接アプローチ(攻め)・熱意が伝わりやすい
・採用のきっかけを自ら作れる
・内部の情報を直接得られる
・採用があるとは限らない
・時間と労力がかかる
・断られる精神的タフさが必要
・行動力と情熱に自信がある人
・どうしてもその協会で働きたい人
公務員試験(待ち/正攻法)・身分が安定している
・採用人数が比較的多い
・幅広い業務を経験できる
・希望の部署に配属されるか不明
・試験勉強が大変
・倍率が高い
・安定志向が強い人
・幅広い視点で地域貢献したい人

よくある質問(FAQ) – あの日の私が知りたかったこと

Q1. スキルも資格もないのですが、大丈夫でしょうか?

A1. 大丈夫です。もちろん、語学力やWebデザインのスキルがあれば強みになりますが、それ以上に大切なのは「学び続ける姿勢」と「地域への愛情」です。イベントのボランティアなどを通して、「自分にできることは何でもやります!」という積極的な姿勢を見せることが、何よりのアピールになります。

Q2. 直接連絡するのは、迷惑だと思われませんか?

A2. 「礼儀」と「熱意」があれば、迷惑だと思われることはまずありません。ポイントは、相手の時間を奪わない配慮です。いきなり電話をかけるのではなく、まずはメールで丁寧に要件を伝えること。「お忙しいところ恐縮ですが」の一言を添えるだけで、印象は大きく変わります。熱意のある学生を無下に扱う組織は、こちらから願い下げ、くらいの気持ちで臨みましょう。

Q3. アルバイトの募集もありません。どうすればいいですか?

A3. アルバイト募集がない場合こそ、チャンスです。それは、他の学生が接点を持つ機会がないということだからです。前述の通り、ボランティアやイベント参加が最も有効な手段になります。また、観光案内所や関連施設(物産館など)でアルバイトを始め、間接的に職員の方と繋がる、という方法もあります。

終わりに:君が探すのは「求人」ではなく「ご縁」

私の就職活動は、最終的に、あの日メールを送ったことがきっかけでインターンシップへと繋がり、卒業後の春、正式に職員として採用されるという形で幕を閉じました。

もし、私が「求人情報がない」と諦めて、ただパソコンの前で待ち続けていたら。もし、あの時、勇気を出して一歩を踏み出していなかったら。この未来は、決して訪れませんでした。

今、あなたは、かつての私と同じように、暗い森の中で道を探しているかもしれません。でも、忘れないでください。あなたが進みたい道の先には、必ず「扉」があります。それは、他の人と同じ、ピカピカに磨かれた正面玄関ではないかもしれない。少し見つけにくい場所にある、小さな「隠し扉」かもしれない。

その扉を開ける鍵は、就活サイトには載っていません。それは、あなたの胸の中にある「この街が好きだ」という純粋な情熱と、「ここで働きたい」と願う強い想い、そして、自ら扉をノックする、ほんの少しの勇気です。

待っているだけじゃ、あなたはいつまでも観光客。

さあ、勇気を出して扉を叩き、この街の未来を創る「案内人」への第一歩を、今日から踏み出してみませんか。

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